医療に関わることなどを
by sui-m
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なかのひと AX
福島県立大野病院事件 第2回公判
2月23日,大野事件の第2回公判が行われました。
午前に双葉厚生病院産婦人科のK医師、午後に県立大野病院外科(当時)のM医師の証人尋問が行われたということです。

周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページとロハスメディカル ブログで詳細な報告が行われています。
周産期医療の崩壊をくい止める会の報告では実際に行われた問答が詳細に再現されており,ロハスメディカルブログでは記者の方の感想を交えた報告となっています。

周産期医療の崩壊をくい止める会 
 第2回公判について

ロハスメディカルブログ
 福島県立大野病院事件第二回公判(1)
 福島県立大野病院事件第二回公判(2)
 福島県立大野病院事件第二回公判(3)

術中のことなどについては専門の方におまかせして,今回の公判で画像診断が話題となったところの感想を少し。

以下,周産期医療の崩壊をくい止める会の第2回公判についてより

検察  臨床上、術前検査で癒着胎盤の発症を疑うものは、どういう検査があるか?

証人  通常は超音波検査、カラードプラ検査、MRI、膀胱鏡、特殊な検査として、胎児のつくるホルモンが母体で高くなるということがあげられる。

検察  そのうちの一部で、エコー、カラードプラは具体的にどういうことをみるものか?

証人  超音波はあらゆることの診断に用いられているが、癒着胎盤については、あまりに稀なので、通常の検査ではそこまで見ていない。

検察  カラードプラはどういうことをみるのか?こちらの質問の回答に限って答えてください。

証人  血流をみます。

検察  血流豊富かどうかは、画像で確認できるというイメージで良いか?

証人  血管の太さや数がこうだから、ではなく、経験もあるが、通常より多いなという感覚的なもの。

検察  血流が豊富なほうが、癒着胎盤に傾くのか?

弁護側  もう少し事実関係をきいてもらったほうが良いのではないか。

裁判  まあ、どちらかということだから、証人は答えられるようなら答えてください。

証人  絨毛間腔が広がるので、血管が太くなる。癒着胎盤のほうが血流が豊富である。

検察  なじみやすいということか?

証人  いや、可能性があるということだけです。

検察  カルテで、所見をみると・・

弁護側護  今まとめられた質問内容では、最後の質問、血流が豊富であっても、それでなじむのではなく、あくまでも可能性があると証人は答えられた。

裁判  検察官は言い直すときには同じように答えられた方が良いですね。

検察  豊富な血流を認めたときに、癒着胎盤の可能性は、高くなるのか低くなるのか。

証人  私は症例をそうもっていないのでわからないです。

検察  ただ、証人のお考えとして、カラードプラで見たときに、高めるのかどうかお答えください。

証人  高めるかどうかわかりません、診断の一助にはなるでしょうか。

検察  カルテの医師記録 12月6日を示します。(検察はカルテ本物をもっている)これは患者さんの検査の写真です。16号証に写しがあります。この下の写真はカラードプラ検査です。これをご診断いただいてわかりますか?写真上は血流についてはどのようにご覧になりますか?

証人  カラードプラは、カラーでみないと、白黒のコピーではではわかりませんが(当たり前である。カラードプラはカラーで血流を示す機会なのだから)、白いところが血流です。

検察  質問したのは、下の写真の、白い細長いところ、この部分が血流だろうと見受けられると。よろしいですか?

証人  はい。

検察  この写真から、血流が豊富な印象なのか?

証人  一枚の写真をみてもね・・・ (一枚の写真で血流が豊富か診断できるわけない)

弁護  豊富というのは、何を基準に豊富といわれているのか。そういうあいまいな質問では答えにくい。

裁判官  いや、まあ証人は経験とおっしゃっているんだから、まあ。

弁護士  でしたら、経験でカラードプラを癒着胎盤でしたことがあるか? とか、そういうふうに質問をしたら。

検察  今のは疑義か?

裁判  では、これで判断できますか?答えてください。

証人  無理です。

検察  12月6日の下の写真の欄外の文字を読めますか?

証人  はい。膀胱下に血流+とあります。

検察  このような表現は、どのような情報か?

証人  前置胎盤?ですから、膀胱の後ろに血流があっておかしくないです。

弁護  今の検察の質問は、血流があるということで、癒着胎盤に結びつけようとするものですので、間違いです。

裁判官 疑義はいらないと思いますので却下します。

弁護  証人の答えたことと、検察のまとめとが符号していない。前置胎盤と癒着胎盤の区別なく議論しています。


検察は「カラードプラ検査では血流が豊富であり,癒着胎盤を疑うべきであった」という結論にもっていきたかったのでしょうか?
予見できたはずだ,と言って欲しかった?
それにしてはカラードプラを白黒コピーで示すあたりがなんとも…。

そもそも超音波検査は検査を施行した者以外が後から数枚の写真だけ見ても診断するのは非常に難しいと思うのですが。
せめてビデオで全体を見直すとかならまだしも。

弁護側から検察が前置胎盤と癒着胎盤の区別なく議論している,という反論がなされていますが,終了間際に裁判官から外科医になされた下記の質問の部分を読むと,裁判官も前置胎盤と癒着胎盤を区別して尋問を聞いていたのかどうか怪しいような気がします。

裁判官:子宮に胎盤が載っていますよね?(以下理解できず。上向き?とか。おそらく位置関係を混同されている)


こういう理解のもとで,実際に行われた医療が適切であったかどうかを裁こうというのは無理がないでしょうか。

ある産婦人科医のひとりごとで新聞各社の報道内容が掲載されています。

その中で目に付いたのが

検察側は、「あくまで胎盤を無理やりはがしたこと自体を問題としており、クーパーを使ったからいけないとは一言も言っていない」としている。
朝日新聞(福島)2月24日より


えーと,公判の争点に「クーパー使用の妥当性」とあったと思ったのですが検察側は言ってないと?

(公判概略について)
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# by sui-m | 2007-02-25 23:00 | 医療
あれから1年
我々は福島事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します。


このエントリーは「新小児科医のつぶやき」の2.18企画に賛同したものです。
たくさんの輪が広がることを願います。

新小児科医のつぶやき 「2.18」
ある産婦人科医のひとりごと 「あれから1年」
勤務医 開業つれづれ日記 「我々は福島事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します。」
道標 「2.18」


1年前の今日,K先生は突然逮捕されました。
先日の初公判後のインタビューで逮捕時の様子を話されていましたが
任意同行後の突然の逮捕だったそうです。

何故逮捕されなければならなかったのか。
逃亡のおそれ?-事件後も同じ病院で診療を続けていたのに?奥様は臨月間近だったのに?
証拠隠滅のおそれ?-カルテその他は押収済みで,職員からの証言もとれていたのに?

今でも私はあれは不当逮捕だったと思っています。


この1年で医療の現場は大きく変わってしまいました。
その大きなきっかけの1つがこのK先生の逮捕であったことを否定する医療者は少ないと思います。

医療事故などの報道で患者さんが「被害者」と表記されることがあります。
「害を被る」というからには対極として「害を加える」ものがあることになります。

では患者さんに害を与えているのは誰でしょう?

・・・患者さんに「加害している」のは「病気」ではないのでしょうか?

採血も,投薬も,手術もそれ自体が侵襲を与える行為です。
医療者はその行為のriskとbenefitを考慮して,benefitが上回ると思うからこそ その行為を行います。
ただし,全てを完全に予見できるわけではありません。

どんなに努力してもなお,どうにもならないことが医療にはあります。
産科だけのことではありません。
100%安全な医療などはないのです。

K先生の無罪を信じています。
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# by sui-m | 2007-02-18 23:00 | 医療
2月7日の衆議院予算委員会での柳沢厚労相の答弁
ネット上で2月7日の衆議院予算委員会での枝野議員と柳沢厚労相との質疑応答が話題になっています。
実際の映像はここで見れますが,
「勤務医つれづれ開業日記」のコメント欄で有志の方々が文章化してくださっており,「ある産婦人科医のひとりごと」でまとめて読むことができます。

長いですが是非一読をお勧めします。

実際のビデオを見ても柳沢厚労相が何をいいたいのかイマイチわからなかったのですが,文章にされたものを読んでもやっぱりよくわからない…。

「産科医の減少は出産数の減少に伴い、需要が減ったため」という言葉だけでも はぁ?なんですが,枝野議員の質問に対して「とにかくネットワーク化,効率化で産科医療はなんとかできる」との返事を繰り返すばかり。いったいこの人の頭のなかでの「ネットワーク化」ってどんなイメージなんでしょう?

ネットワークでつなぐと医師や助産師が一瞬で病院から病院へ移動できるとか?


〔追記〕「新小児科医のつぶやき」でYosyan様が「続々産科集約化の算数」として医師数やベッド数,分娩数その他の計算をされていらっしゃいます.

現在の分娩数が110万で、半数が開業医で生まれ、残りの半数を実働3000人程度の産科医で支えても、一人当たりの分娩数は180分娩です。今でもそれだけです。開業医の撤収が進み勤務医負担が6割になったら220分娩となり、7割にでもなろうものなら260分娩になります。開業医の高齢化は既に周知の事です。現役実働産科医の逃散が急速に進んでいるのもまた常識です。去年の6月が平均180分娩だったのが、今なら200分娩になっていても不思議ありません。


どう考えても産科医の減少の方が少子化による出生数の減少より急激に進んでいると思うのですが,柳沢厚労相の答弁を見る限り,厚労省はそう思ってないのでしょうね.
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# by sui-m | 2007-02-14 23:00 | 医療