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by sui-m
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福島県立大野病院事件 第7回公判
去る8月31日,福島県立大野病院事件の第7回公判が行われ,K先生ご本人への被告人質問が行われました.
今回は予定では主尋問(弁護側)、反対尋問(検察側)、再主尋問(弁護側)という流れで進むはずだったのに,検察側の反対尋問が長時間にわたったため,再主尋問は次回以降に延期されることとなったとのこと.

公判からもうすぐ1ヶ月.既にたくさんの医療系ブログで取り上げられており,今更記事にするのは周回遅れもいいところなのですが....

もっと早くに書くつもりでした.でも正直,読むのがつらくてなかなか膨大な傍聴記を読み終えることができなかったのです.
ロハスメディカルブログの川口様はこれでも「はしょった」と書かれておいでです.
実際の公判の様子,更に今回の公判で明らかになった検察での取り調べの様子を想像すると背筋が凍るような思いです.

今回も周産期医療の崩壊をくい止める会のHP上には詳細な公判傍聴録と佐藤教授の傍聴記が,また,ロハスメディカルブログにも川口様の感想を含めた詳細な公判の様子がupされています.
いつものことながら,いえ,いつも以上に長い長い報告です.

周産期医療の崩壊をくい止める会  
 第七回公判について

ロハス・メディカル・ブログ
 福島県立大野病院事件第七回公判 (1)
 福島県立大野病院事件第七回公判 (2)
 福島県立大野病院事件第七回公判 (3)
 福島県立大野病院事件第七回公判 (4)
 福島県立大野病院事件第七回公判 (5)

更に日経メディカルでも傍聴記が掲載されています.
 「私に落ち度はない、精一杯やった」 福島・大野病院事件の第7回公判が開催


弁護側の質問では検察が「K医師は殺人者である」という前提にたって過酷な取り調べを行ったことが明らかになります.

弁護側の質問から(周産期医療の崩壊をくい止める会の報告より引用)

弁護人: 検察官は、クーパーを使うことが問題だという意識だったのですね。

加藤医師: はい。クーパーを使うこと自体が違法行為であり、言い方を換えると、あなたは殺人者だと言われました。

弁護人:  このことを検察官に説明しましたか。

加藤医師: はい。

弁護人:  何度も説明しましたか。

加藤医師: はい。

弁護人:  なぜ、そのような調書が残っていないのですか。

加藤医師: 筋張ったところを削ぐように剥がしたことは記載されていますが、それ以外の部分についてはクーパーを使ったこと自体が悪い感じで、あまり理解してもらえませんでした。



弁護側からの質問で伺える検察の取り調べの様子を読むだけでも胸が苦しくなったのに,午後に行われた検察の質問に至っては....

弁護側,検察側の質問の全てを読んでも,私の中に残ったのは検察の取り調べの理不尽さ,また,自分たちが勝手に作ったストーリーの外にあることについての無理解さなどだけでした.

検察側はこの長い長い質問でいったい何を示したかったのでしょうか?
そしてそれは成功したのでしょうか?

検察官: 冒頭陳述の際「信頼してくれた患者さんを亡くしてしまったことは医師として忸怩たる思いがある」と述べましたが、医師として患者が死亡してしまって残念だという以外に、結果的に落ち度があったと思う事はありますか。あの時、あれをやれば良かったと思うことがありますか。

加藤医師: 落ち度は特にないと思っています。医師として精一杯のことをやりました。精一杯のことをやったからこそ、その結果にすごく悔しい思いをしています。



明後日9月28日は第八回公判の予定です.

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by sui-m | 2007-09-26 18:55
その夜の奈良医大
奈良の死産事件の報道が続いています.
受け入れを断った病院が悪い,奈良医大には空きベッドがあったのに!という論調が目に付きますが,奈良医大には本当に受け入れる余裕があったのでしょうか?

搬送依頼があった夜の状況の詳細が奈良医大のHPに公表されました.

奈良医大HPより
今般の妊婦救急搬送事案について
http://www.naramed-u.ac.jp/~gyne/2007.08.28.html

 去る8月29日、救急搬送中の妊婦さんが不幸にも死産にいたりましたことについて、誠に遺憾に感じております。
 今回の事案につきましては、マスコミを通じて、さまざまな報道がなされておりますが、当病院の産婦人科における8月28日から29日にかけての当直医師の勤務状況や当病院と救急隊とのやり取りについて調査しましたので、その結果を公表いたします。

平成19年8月28日の当直日誌記録より

(産婦人科当直者 2名)

時間 対応内容

8月28日(火)     夕方から抜粋

19:06         
妊娠36週 前回帝王切開の患者が出血のため来院、診察後に帰宅
19:45         
妊娠32週 妊娠高血圧のため救急患者が搬送され入院、重症管理中
09:00~23:00     
婦人科の癌の手術が終了したのが23:00、医師一人が術後の経過観察
23:30         
妊娠高血圧患者が胎盤早期剥離となり緊急帝王切開にて手術室に入室
23:36~00:08     
緊急帝王切開手術
00:32         
手術から帰室、医師一人が術後の処置・経過観察をする。重症のためその対応に朝まで追われる。妊婦の対応にもその都度応援する。当直外の1名の医師も重症患者の処置にあたり2:30ごろ帰宅


8月29日(水)

02:54        
妊娠39週 陣痛のため妊婦A入院、処置
02:55         
救急隊から1回目の電話が入る(医大事務当直より連絡があり当直医一人が事務に返事) 「お産の診察中で後にしてほしい」、そのあと4時頃まで連絡なし
03:32         
妊娠40週 破水のため妊婦B入院、処置 (これで産科病棟満床となる)
04:00         
開業医から分娩後の大量出血の連絡があり、搬送依頼あるが部屋がないため他の病棟に交渉
04:00頃       
この直後に救急隊から2回目の電話が入る 「今、当直医が急患を送る先生と話しをしているので後で電話してほしい」旨、医大事務が説明したところ電話が切れた
05:30(病棟へ)   
分娩後の大量出血患者を病棟に収容 (産科満床のため他の病棟で入院・処置)
05:55         
妊婦Aの出産に立ち会う。その後も分娩後出血した患者の対応に追われる
08:30         
当直者1名は外来など通常業務につく、もう1名は代務先の病院で24時間勤務につく


嵐のような一晩です.
朝9時からやっていた婦人科の手術が終わったのが23時.
重症の母体搬送を受け入れ→緊急帝王切開.
陣痛・破水による入院2例(うち1例は出産).
分娩後の大量出血の母体搬送受け入れ(しかも産科満床のため他病棟で管理)


当直医の先生方は当然「夜勤」として夕方から働き始めたわけではなく,28日の朝から通常通りの勤務をし,この一晩を上記のような慌ただしさで過ごし,なおかつ29日の朝からまた通常勤務,あるいは代務先の病院で24時間の勤務に入られています.この状況では仮眠すらとれていないのでは…?

マスコミはこのような状況でも,それでも受け入れるべきだったと言うのでしょうか.

しかも『妊娠24週』と判明したのは児を死産してからで,搬送当時の情報は『妊娠3ヶ月の流産』程度だったはず(各社報道も最初は『妊娠3ヶ月』となっていましたよね).妊娠3ヶ月の頃の流産だとすれば児側の要因であることが多く,医療が提供できることはほとんどありません.緊急度としてはかなり低い.

もしこの妊婦さんを受けれいれていたら,その時点で奈良医大の産科病棟は満床です.
今度はその次の妊婦Bさんや大量出血後の妊婦さんの受け入れ先を探す必要がでてきたことでしょう.もしかしたら間に合わず,今度はそちらが『たらい回し』とニュースになっていたかもしれません(っていうかなったでしょうね,きっと),


何度読んでも胸が苦しくなるような夜の状況ですが,この日が特別に忙しかったというわけではなく,この先生方はこうやって奈良の産科を支えていらっしゃったのでしょう.

そして多分これは奈良だけではなく,全国の産科の先生方の現状です.
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by sui-m | 2007-09-01 08:38 | 医療