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福島県立大野病院事件 第6回公判
7月20日,福島県立大野病院事件の第6回公判が終了しました.
今回はこの事件の鑑定書を書いた新潟大学医学部産婦人科教授の田中憲一先生に対する尋問が行われました.

今回も周産期医療の崩壊をくい止める会のHP上に詳細な公判傍聴録が掲載され,ロハスメディカルブログでも公判の様子がupされています.また,周産期医療の崩壊をくい止める会の報告の冒頭には佐藤教授の傍聴記も掲載されています.

周産期医療の崩壊をくい止める会  
 第六回公判について

ロハス・メディカル・ブログ
 福島県立大野病院事件第六回公判 (1)
 福島県立大野病院事件第六回公判 (2)

いつものことながら,どちらも長い報告です.
こうやって記録してくださる方々がいらっしゃるおかげで,実際に傍聴することのできない私たちも裁判の様子を窺い知ることができます.
本当に有り難うございます.


今回の公判でも術前診断としての画像診断が話題になりました.
癒着胎盤の術前診断として超音波検査とMRI検査が取り上げられています.

まず,弁護側の尋問で超音波検査について触れられたところから.

この前の部分で証人は弁護側から,超音波検査はプローベの角度や押さえる強さを変えることによる画像の変化を経時的に見ながら医師は総合的な判断を下すのではないか,と質問され,同意しています.
その後,検察側から提示された数枚の写真で癒着胎盤を疑うべきであったと証言したことについての質問が行われます.


第六回公判についてより
弁護1: まず、12月3日。青いマジックでしるしをした、ここに血流が認められるから、先生は癒着胎盤を疑うべきであったと。

証人: いえ、疑っても良い、ということです。

弁護1: でも、今の血流はごく一般的に見られるものではないですか

証人: 見られることもあります

弁護1: 先生は癒着胎盤の患者さんについて診察をされたことはない、ということは当然、癒着胎盤の超音波検査をやったこともない。それなのにどうして、この血流をみて、癒着胎盤を疑ったらいい、などということがわかるのですか

証人: それは、前回帝王切開で、全前置胎盤なので、他の人よりその、前壁の癒着胎盤の確率が高いと。

弁護1: それは一般的に言われていることですね。前回帝王切開で全前置胎盤の場合は、前壁に癒着しやすい。だからそれを疑う、それは結構ですよ。そのことと、今のその超音波検査、これで青のマジックで、なんか白く見える、血流がある、だから疑うべきだ、ということは全く結びつかないのではないですか。

証人: 本で書いてあるのが、その子宮前壁の線が見えない、ということが書いてあるので、疑ってもよいのかなと・・


午前中の検察側からの尋問に対しては超音波所見から癒着胎盤を疑うべきであったと答えていたように思うのですが,上記の文章を読むと,画像所見から癒着胎盤が疑うことが可能であったというよりは,「前回帝王切開で,全前置胎盤なので癒着胎盤の確率が高い」から疑うことが可能であった,とおっしゃっているように感じられます.
超音波検査はプローベを当ててから検査終了までの全ての画面が診断対象となります.残された写真はその一部に過ぎません.もちろん,大事な所見を写真に残すのですが,実際に検査を行った者以外が更にその写真の一部を見て診断するのは非常に難しいことと思われます.
しかも証人は周産期の専門家ではありません.
佐藤教授の傍聴記にもその当たりのことが述べられています.

佐藤教授の傍聴記より
午前中は検事の尋問に答えた。この中で重要で問題になったところは、癒着胎盤の予測であったが、田中教授は2枚の超音波写真から子宮前壁で子宮と癒 着を疑っていいと思ったと証言した。しかし、その2枚の超音波写真のうち1枚は子宮頚管の内子宮口から主に後壁の一部に胎盤が存在する写真で、田中教授は 内子宮口のところにある低エコーが存在するところを指し、ここが癒着をしていると疑ってもよい所見と証言した。そこは血管が存在するところで、決して癒着 を疑わせる所見ではないことは専門家が見ればわかる所見である。内子宮口の所が癒着していることは稀であるし、実際に今回の場合前壁にあった胎盤は簡単に 剥離し、癒着は後壁に認められたのである。もう一枚も子宮前壁のところに存在していた血管を指し、2枚の写真から癒着を疑ってもよいとした。これも、時々前置胎盤?の時にみられる所見で癒着胎盤特有の所見ではない。癒着を疑ってもよい所見だからMRIをすべきだったと証言。MRIは有用とされているが、決してMRIをとったから癒着胎盤を診断できるまでには現在のところ至っていない。


どうやら証人が証言した所見は実際の所見とかなり異なっているようです.

また,午前中の検察側からの尋問に対し,証人は超音波検査で疑うことが可能であったから,MRIを行うべきであった,ともおっしゃっています.確かにMRIで癒着胎盤が診断可能であったという報告もありますが,癒着胎盤のMRI診断はまだそれほど精度の高いものではありません.


今回の傍聴記で印象深かったのは,田中教授がどのような観点から今回の鑑定を行ったかという発言です.

第六回公判についてより
弁護1: 今回の鑑定を先生がおやりになった。刑事上の過失があるかないかということで、先生は鑑定をなさったわけですか

証人: 私は医学上、安全な医療をするにはどうすればいいかという観点で鑑定を行いました。


刑事事件の鑑定書でなければ,例えば症例検討会などではこの観点は正しいものとなるのでしょう.でも今回は刑事事件の鑑定書です.刑事上の過失があるかないかという観点が重要ではないでしょうか?そして仮にそのような観点から鑑定が行われていたなら,違った鑑定書となっていたのではないでしょうか?

次回の公判は8月31日、K先生ご本人の証人尋問が行われます.
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by sui-m | 2007-07-25 19:45 | 医療
『幸せなお産』のその後
「NATROMの日記」さんの『信仰と狂気~吉村医院での幸せなお産』
『幸せなお産』というコラムが紹介されています.

『幸せなお産』の経緯をまとめると下記のようなものになります.

オーガニック生活を送っていたある夫婦のところで妊娠が発覚.
自然分娩を希望したが逆子であったため助産院に断られ,
大阪の病院では児頭骨盤不均衡のため自然分娩は無理と言われた.
お灸、ホメオパシー、逆子体操といろいろ試みたが結局逆子は戻らず.
それでも自然分娩を希望し,吉村医院を受診.
吉村先生は「バリバリの安産です」と言って受け入れてくれた。
まき割りやスクワットをしながら陣痛を待ち,出産予定日から1ヵ月過ぎて
やっと陣痛がきたがなかなか生まれず3日目に転院.
転院先で帝王切開で出産.
出産翌日に吉村医院に母児ともに転院.
生後3日目の授乳中に妻が居眠りをしておこった事故で児死亡.


魚拓はこちら

信じられないのはこれはどうやら実話であり,
さらにこの方(父親)は本気でこれが「幸せなお産」だったとおっしゃっていること.

『幸せなお産』に手を加えたものが『雪が降るまち』と称してブログに記載されています.

吉村先生がいつも言うように、誘発分娩、帝王切開といった目先の安全や医師の都合を優先した宇宙からは外れたお産では、
子育てと言う人生の最大の喜びが、きっと何割引かになるのだろう。

 
ゆきまつは、僕たちに幸せな3日間をくれたのかもしれない。
本来ならば、ゆきまつはゆきのおなかの中でなくなっていたのかもしれない・・・
「お産は、宇宙が決めること。なくなる命もある・・・」
今さらながら、Y先生が日頃から口にしていた言葉が思い出される。
Y先生が僕たちにくれた3日間・・・陣痛の間、2万人の赤ちゃんをとりあげたY先生には、ゆきまつの声が届いていたのではないだろうかと思う。
己の運命を知りつつ、ゆきまつは僕とゆきのあいだにうまれて来てくれたのか?
最後の瞬間にさえ、ゆきまつは僕たちに生きる希望をくれた。
蘇生処置の間中、僕はゆきまつの小さな小さな手をにぎりしめていた。
ゆきまつの小さな胸は、確かに脈打っていた。
総合病院の救急隊が到着し、Y先生がゆきまつから手を離したとたん、鼓動がやんだ・・・命の火は、きえた・・・



なんだかリアリティに乏しい,まるで小説のような文章ですが
この方は本当にこう思っているのでしょう.

でも本当にこれが「幸せなお産」だったのか?

予定日を1ヶ月も超過した児頭骨盤不均衡の児,しかも骨盤位で初産.
これがいかに無謀なことか.
ちょっと調べればわかりそうなものなのに.

「目先の安全より(自分の)人生の喜び」を優先すべき?

お産は何よりもまず,母子の安全を図るのが一番大事なことだと思うのですが,
目の前にある安全をとらずに何をとるというのでしょう.

「自然分娩が無理なら帝王切開で」と普通に普通の病院を選択していたら,
親子3人での「幸せな生活」が今現在もあったかもしれないのに.


NATROMさんのコメント欄にご本人(父親)がおいでになり,コメントを残されています.
他の方がこのお産がどんなに無謀なことであったのか.
(しかもそれは十分「避けられた」ことであったのに)
このお産が周りに与えたかもしれない影響を懇切丁寧に説いても全然通じる様子がありません.

あれだけ書かれたコメント欄を読んでもなお,
児の命よりも大切な「素晴らしい体験」だったとまだおっしゃる.

理解しようと彼のコメントを何度も読みましたが,私にはわかりません.
なんだか同じ文字で同じ言葉で綴っているのにまるで違う「くに」の言葉のようです.

何故こちらの言葉が通じないのか,と向こうも思っているのかもしれませんが.
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by sui-m | 2007-07-13 20:51 | 医療
救命のための気管内挿管 400点
あかがま先生のところ
「救命のための気管内挿管が4000円」(!)
と書いてあったのを見てちょっとびっくりしたので,
放射線部の本棚から『診療点数早見表 2006年4月版』という本を引っ張り出してみる.

病院で行われる診療の全てはこの「診療点数」で計算されることになっていて
いってみればレストランのメニューのようなもの.
1点は10円.100点なら1000円.

レストランと違うのはレストランではメニューの値段はお店側で決められるけど
診療点数は病院側に決める権利はなくて国が決めているということ.
そしてレストランのスタッフはメニューの値段を把握しているけれど
病院で働くスタッフはあまりこの点数に精通してはいないということ.

実は私も放射線科の検査の点数でさえあまりよくわかってないです.

もし,患者さんに「今日の検査は全部でいくらですか?」と聞かれても
多分答えられない.


さて,『診療点数早見表 2006年4月版』.

「気管内挿管」の点数は….

 救命のための気管内挿管 400点 

…ホントに4000円だった(当たり前).

ついでにあかがま先生コメントのところにあった摘便と骨髄穿刺については….

 摘便    100点
 骨髄穿刺(胸骨) 80点

うわっ.ホントに摘便の方がちょっと高い.
摘便の100点が高い,というんじゃなくて,骨髄穿刺の80点って安すぎ.

ちなみに骨髄穿刺以外の「穿刺」系だと

 胸腔穿刺 220点
 腹腔穿刺 230点
 心膜穿刺 500点

2200円に2300円に5000円….
むー.

そういえばこの間テレビで「耳掻き専門店」を紹介していました.
そこでは「耳掻きのプロスタッフ」が最新のイヤースコープを使って耳掃除をしてくれて
料金が10分 1050円,20分だと2100円とのこと.

確か耳の処置ってのもあったはず….

あった!

耳処置(点耳,耳浴,耳洗浄および簡単な耳垢除去含む,入院中のみ算定可)  25点

250円か….

しかも耳掻き屋さん10分の方が骨髄穿刺より高いときてる.



日本の薬価や医療材料・医療機器の販売価格は欧米より高い,といわれています.
一方で、技術料や検査料は何故こんなに低いのでしょう?
「もの」として目に見えないものにはお金は出せないよ,っていうことなんですかねぇ.
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by sui-m | 2007-07-05 23:51 | 医療
報道ステーション"医療崩壊"の町
6月28日に放映された報道ステーションの特集,
崖っぷちニッポンの現場(1)~"医療崩壊"の町
途中からでしたが,見ました.

遅ればせながら感想など.

古舘伊知郎氏が岩手県立山田病院のある医師に密着して
その日常を追う,という特集でした.

その医師の日常とは….

1日平均200人にもなる外来患者を診療し,
看護師を助手に1人で腹腔鏡手術を行い,
もちろん病棟も見て,
その合間に訪問診療に行き,
夜は3日に1回の当直をこなす.
訪問診療には24時間対応する.

…ふぅ.
こうやって書くだけでもため息がでます.

古館氏はこの医師に密着し,その大変さを見つめます.
「大変ですねー」と驚きます.
でもそれだけ.

何故7名いた常勤医が3名に減ってしまったのか.
今は3名の先生方の頑張りによって維持されているけど,
それがいったいいつまで続けられるのか.
あと1人減ってしまったらどうなるのか.
(実際にこの取材後,この先生は尿管結石で入院されたとコメントがありました.
その間この病院は大丈夫だったのでしょうか?)

また,
果たして日本中にいったいどれだけの「限界病院」があるのか.
医師が減って日常業務に支障をきたしているのは本当に地方の病院だけなのか.
医師は何故辞めるのか.
辞めていった医師たちはいったいどこに行ったのか.
都市部には医師が本当にたくさんいるのか.

やろうと思えばたくさんの切り口があったと思うのですが,
そういったことに対する考察はなし.

“医療崩壊”を特集したのではなく,
その名のとおり,“医療崩壊の町”を紹介する番組だったんだなーというのが感想です.

医療崩壊した町で身を粉にして働く医師と
その医師に感謝する患者さんたち.

でもヒトゴトのように報道しているけど,
そのうちヒトゴトじゃすまなくなりますよー.

番組HP 崖っぷちニッポンの現場(1)~"医療崩壊"の町
魚拓
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by sui-m | 2007-07-02 19:31 | 医療