「ほっ」と。キャンペーン

医療に関わることなどを
by sui-m
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
なかのひと AX
福島県立大野病院事件 第6回公判
7月20日,福島県立大野病院事件の第6回公判が終了しました.
今回はこの事件の鑑定書を書いた新潟大学医学部産婦人科教授の田中憲一先生に対する尋問が行われました.

今回も周産期医療の崩壊をくい止める会のHP上に詳細な公判傍聴録が掲載され,ロハスメディカルブログでも公判の様子がupされています.また,周産期医療の崩壊をくい止める会の報告の冒頭には佐藤教授の傍聴記も掲載されています.

周産期医療の崩壊をくい止める会  
 第六回公判について

ロハス・メディカル・ブログ
 福島県立大野病院事件第六回公判 (1)
 福島県立大野病院事件第六回公判 (2)

いつものことながら,どちらも長い報告です.
こうやって記録してくださる方々がいらっしゃるおかげで,実際に傍聴することのできない私たちも裁判の様子を窺い知ることができます.
本当に有り難うございます.


今回の公判でも術前診断としての画像診断が話題になりました.
癒着胎盤の術前診断として超音波検査とMRI検査が取り上げられています.

まず,弁護側の尋問で超音波検査について触れられたところから.

この前の部分で証人は弁護側から,超音波検査はプローベの角度や押さえる強さを変えることによる画像の変化を経時的に見ながら医師は総合的な判断を下すのではないか,と質問され,同意しています.
その後,検察側から提示された数枚の写真で癒着胎盤を疑うべきであったと証言したことについての質問が行われます.


第六回公判についてより
弁護1: まず、12月3日。青いマジックでしるしをした、ここに血流が認められるから、先生は癒着胎盤を疑うべきであったと。

証人: いえ、疑っても良い、ということです。

弁護1: でも、今の血流はごく一般的に見られるものではないですか

証人: 見られることもあります

弁護1: 先生は癒着胎盤の患者さんについて診察をされたことはない、ということは当然、癒着胎盤の超音波検査をやったこともない。それなのにどうして、この血流をみて、癒着胎盤を疑ったらいい、などということがわかるのですか

証人: それは、前回帝王切開で、全前置胎盤なので、他の人よりその、前壁の癒着胎盤の確率が高いと。

弁護1: それは一般的に言われていることですね。前回帝王切開で全前置胎盤の場合は、前壁に癒着しやすい。だからそれを疑う、それは結構ですよ。そのことと、今のその超音波検査、これで青のマジックで、なんか白く見える、血流がある、だから疑うべきだ、ということは全く結びつかないのではないですか。

証人: 本で書いてあるのが、その子宮前壁の線が見えない、ということが書いてあるので、疑ってもよいのかなと・・


午前中の検察側からの尋問に対しては超音波所見から癒着胎盤を疑うべきであったと答えていたように思うのですが,上記の文章を読むと,画像所見から癒着胎盤が疑うことが可能であったというよりは,「前回帝王切開で,全前置胎盤なので癒着胎盤の確率が高い」から疑うことが可能であった,とおっしゃっているように感じられます.
超音波検査はプローベを当ててから検査終了までの全ての画面が診断対象となります.残された写真はその一部に過ぎません.もちろん,大事な所見を写真に残すのですが,実際に検査を行った者以外が更にその写真の一部を見て診断するのは非常に難しいことと思われます.
しかも証人は周産期の専門家ではありません.
佐藤教授の傍聴記にもその当たりのことが述べられています.

佐藤教授の傍聴記より
午前中は検事の尋問に答えた。この中で重要で問題になったところは、癒着胎盤の予測であったが、田中教授は2枚の超音波写真から子宮前壁で子宮と癒 着を疑っていいと思ったと証言した。しかし、その2枚の超音波写真のうち1枚は子宮頚管の内子宮口から主に後壁の一部に胎盤が存在する写真で、田中教授は 内子宮口のところにある低エコーが存在するところを指し、ここが癒着をしていると疑ってもよい所見と証言した。そこは血管が存在するところで、決して癒着 を疑わせる所見ではないことは専門家が見ればわかる所見である。内子宮口の所が癒着していることは稀であるし、実際に今回の場合前壁にあった胎盤は簡単に 剥離し、癒着は後壁に認められたのである。もう一枚も子宮前壁のところに存在していた血管を指し、2枚の写真から癒着を疑ってもよいとした。これも、時々前置胎盤?の時にみられる所見で癒着胎盤特有の所見ではない。癒着を疑ってもよい所見だからMRIをすべきだったと証言。MRIは有用とされているが、決してMRIをとったから癒着胎盤を診断できるまでには現在のところ至っていない。


どうやら証人が証言した所見は実際の所見とかなり異なっているようです.

また,午前中の検察側からの尋問に対し,証人は超音波検査で疑うことが可能であったから,MRIを行うべきであった,ともおっしゃっています.確かにMRIで癒着胎盤が診断可能であったという報告もありますが,癒着胎盤のMRI診断はまだそれほど精度の高いものではありません.


今回の傍聴記で印象深かったのは,田中教授がどのような観点から今回の鑑定を行ったかという発言です.

第六回公判についてより
弁護1: 今回の鑑定を先生がおやりになった。刑事上の過失があるかないかということで、先生は鑑定をなさったわけですか

証人: 私は医学上、安全な医療をするにはどうすればいいかという観点で鑑定を行いました。


刑事事件の鑑定書でなければ,例えば症例検討会などではこの観点は正しいものとなるのでしょう.でも今回は刑事事件の鑑定書です.刑事上の過失があるかないかという観点が重要ではないでしょうか?そして仮にそのような観点から鑑定が行われていたなら,違った鑑定書となっていたのではないでしょうか?

次回の公判は8月31日、K先生ご本人の証人尋問が行われます.
[PR]

by sui-m | 2007-07-25 19:45 | 医療
<< いつまでもあると思うな… 『幸せなお産』のその後 >>